
あの頃の夏
最近、よく高中正義の音楽を聴いています。1980年に発表されたギター・インストゥルメンタルの名曲「ブルー・ラグーン」が大ヒットし、今でも夏の空気にぴったりと寄り添うような爽快感を持っています。あの頃、まだ高校生だった私は、友人からラリー・カールトンと高中正義のLPレコードを借りて聴いたのを覚えています。
当時は、若さゆえの偏った価値観もあって、「音楽といえば洋楽こそが本物だ」と思い込んでいました。邦楽にはあまり目もくれず、海外ギタリストたちの技巧やサウンドに夢中になっていたのです。けれど、そんな中で出会った「伊豆甘夏納豆売り」という一曲が、私の心に静かに、しかし確かに響きました。その楽曲には、日本の風景や情緒が繊細に織り込まれていて、どこか懐かしく、そして新鮮な感動を覚えたのです。
そんな記憶がふと蘇り、最近になって改めて高中正義の音楽に耳を傾けるようになりました。これまでほとんど聴いてこなかった高中作品を、今ではLPレコードで少しずつ集めています。但し、「伊豆甘夏納豆売り」が入っているアルバムはまだ持っていませんが、アナログの音の温かみと、夏の空気に溶け込むような高中のギターの音色が、心地よい時間を運んでくれるのです。あの頃の夏の空気を連れて。