
竹田の子守唄 / 赤い鳥
「竹田の子守唄」は京都・竹田地方に伝わる民謡をもとにした曲で、1971年に赤い鳥が発表しました。
歌詞は、奉公に出された娘が他人の子をあやしながら、自分の親を思い、ふるさとを懐かしむというもの。「守もいやがる盆から先にゃ 雪もちらつくし子も泣くし」と始まるこの歌には、淡々とした言葉の裏に、どうしようもない切なさが流れています。
やさしいメロディに包まれてはいますが、その内容は決して“安らぎの子守唄”ではありません。少女の目線で描かれるのは、働かされる日々、帰れない家、そして親への思い。現実の厳しさが淡々と綴られているからこそ、かえって胸に迫ります。
この曲は、発表当時「被差別部落を連想させる」として一時期放送禁止になったことでも知られています。竹田の地名が差別的文脈と結びつけられたためですが、歌詞自体に差別的な内容は一切ありません。ただ、社会がまだそうした問題に過敏だった時代――触れてはいけない現実として扱われたのです。
それでも、赤い鳥の歌声は、そうした背景を超えて今も聴く人の心に届きます。澄んだハーモニーが、過去の痛みや悲しみを包み込みながら、まるで祈りのように響きます。1974年に解散した「赤い鳥」のメンバーは音楽性の違い?から「ハイ・ファイ・セット」「紙ふうせん」という別々のグループへ分かれました。尚、「紙ふうせん」は兵庫県西宮市を中心に現在も活動しています。
レコードの盤面を回る光を眺めていると、あの時代に生きた誰かの声が、今も静かに歌い続けているように思えます。









